長かった今年のゴールデン・ウイーク、皆さんはどのようにお過ごしだったでしょうか。

 

 私は、殆ど家から出ないで、ずっとスペイン語の本と格闘していました。

本当に、もっと若い時期にしっかり勉強しておくべきだったと悔やまれます。

何度、同じ単語を辞書で引き直していることか、我ながら感心する忘却率の高さ・・・。

 

 いつも生徒に「踊りもスペイン語も、覚えるしかないからね~」と言っていますが、それはそのまま自分に向けている言葉でもあります。

私のスペイン語の先生はいつも、「やる気」「根気」「暗記」の「3つの」が大事、と仰いますが、それは踊りにも当てはまると思っています。

 

 でも、先日ある本を読んでいて、ほっとしたのは「人は忘れるように出来ている」という言葉でした。

「忘れる」という能力を持っているからこそ、人は不愉快なことや辛くて悲しいことから立ち直れると言うのです。

「忘却」は、根本的に楽しく強く生きたいと願う人間の、一種の自己防衛本能なのだそうです。

 

 なるほど日々、見聞きする物事や人との葛藤を、全て覚えていては情報が溜まり続けるばかりです。

「忘れられない」という苦しさは、何にも勝るものでしょう。

 

 このことから導き出される「逆説」は、「楽しいこと」「気持ちいいこと」は記憶に残りやすい、ということですね。

これに類似する説は他にも色々見聞きしてきましたが、それらをまとめますと、「覚えをよくするコツは、それを楽しむこと」と、ありました。

 

 成長期の記憶力が優れているのは、それだけ未知のものに対する好奇心が旺盛で、意識せずとも「貪欲に楽しんでいるから」らしいのです。

 

 費やす時間や努力を変えないで、効率よく「覚えて」いく為の、ヒントはその辺りにありそうなので、私も自分自身の学び方、また教え方を更に工夫したいと思っているところです。

 いいえ、『Volare』:ボラーレはイタリア語。

1958年のサン・レモ音楽祭で優勝した“ドメニコ・モドゥーニョ”の曲で、カンツォーネとしては唯一、アメリカのビルボードチャートで第1位を獲得しており、第1回グラミー賞最優秀楽曲賞にも選ばれた名曲です。

 

 ジプシーキングが歌って世界的に大ヒットし、日本ではCMソングとなって広く人気を集めました。

 

 残念なことに私はこのオリジナルのボラーレを聞いたことがないので、ジプシー・キングの歌っているイメージしか持たないのですが、彼らの歌う「ボラーレ」はとてもノリが良くて好きです。

 

 でもフラメンコではありません。

彼らが歌っているボラーレの歌詞は、スペイン語でも、アンダルシア訛りでもありません。

 

 ジプシー・キング当人達も、よもや「フラメンコアーティスト」だとは思っていないでしょうし、フラメンコアルティスタ側から見れば、全く想定外のことでしょう。

 

 では何故、日本では未だに「ジプシー・キング」や彼らの歌う曲が「フラメンコ」と混同されてしまっているのか。

 

 それは、日本の音楽界にイメージとして先行してしまっている「フラメンコ」と、実際の「フラメンコ」の普及率に差があること。それから、日本人にとってスペイン語、イタリア語、ポルトガル語は、非常に識別しにくい言語なので、それらの内、どれかひとつにでも通じていないと、全部、同じに聞こえてしまうこと。

この二つが特に大きな原因であろうと思われます。

 

 また、フラメンコのアルティスタには異文化や流行を取り入れるのを得意とする人も居て、ヒット曲になったものを自分達の出し物としてアレンジし、ショーを盛り上げるような所があります。

(勿論、その逆に頑固一徹、古いスタイルを遵守する人も居ます。)

 

 たとえば、日本人に良く知られている“ベサメ・ムーチョ”をフラメンコアレンジで歌っているスペイン人歌手も居ますが、それは、あくまで日本人に喜んでもらおうとするサービス精神がなせる技なので、受け止める側がそのことを判っておかないと、「フラメンコ」そのものに対する誤解が生じて広まってしまいます。

 

 私は、もし自分がイタリアを愛し、カンツォーネを愛する者であるならば、「ボラーレ」が「フラメンコ」と認識されることを悲しく思うでしょう。  

 

 「ジプシー・キング」は自分達流の「ボラーレ」を唄い、それを世界が受け入れました。

彼らの言葉はスペイン語でも、イタリア語でもなく、彼らの出身地南フランスで、歴史的にスペイン語が強く残ったある地域の言葉ということです。

その混ざり合った言語の個性こそが、「ボラーレ」が世界に広まったひとつの要因であるかも知れません。

 

 何故、「ボラーレ」について、こんなに詳しいかと申しますと、以前ある仕事で、お客様に「フラメンコと言えば、ボラーレだから、ぜひフィナーレは賑やかにボラーレを歌って欲しい」とリクエストされたことがあるのです。

 

 「フラメンコ」=「ボラーレ」という珍説に首を傾げながらも、そこは先述したように、お客さまあってのショーですから、サービス精神旺盛に「では、コピーしてみましょう」と引き受けました。

 

 それ以前には ♪ボラーレ~♪ というサビしか聞き覚えがなかったので、Volar:ボラール(飛ぶ)という動詞の活用にしてはヘンな所にアクセントがあるなあと思いつつも、きっと「スペイン語の唄」だと思い込んでいたのでした。

(volaré:ボラ直説法未来1人称単数なら有り。これはにアセントがある)

 

 ところが渡された歌詞カードと「曲」を聴いたら、さっぱり意味が判らず、どうやら「イタリア語」らしい。

似て非なるものほど識別が難しい上に、何度聞いても歌詞カードと実際の唄が食い違っています。

 

 フラメンコの歌詞なら、その食い違いを聞き取るのはほぼ大丈夫なのですが、イタリア語ではお手上げです。

でも、出鱈目に歌うのは嫌なので、西・伊2ヶ国語が判る人にネイティブチェックをお願いしました。

 

 返事は「これはスペイン語でも、イタリア語でもない」というものでした。

 

 誤解されていたお客様にも「原曲はイタリアのカンツォーネでフラメンコではない」ということをちゃんとお伝えしたのですが、まだまだジプシー・キングの音楽を「あれぞフラメンコ」と思っておられる方は多いようです。

 

 せっかくの名曲ですから、その原曲と、ヒットさせたグループのセンスを正しく評価する為にも「フラメンコ」というジャンルとは混同されずに、広く愛される方が良いように思います。

 1977年に録音された『Camelamos Naquerar』 : カメラモス ナケラールというレコードがCDで復刻されました。

http://www.acustica.jp/contents/tienda/data/pageview.cgi?ID=00063

 

 これはMario Maya :マリオ・マジャというbailaor :バイラオール(男性舞踊家)の創作フラメンコで、ジプシー迫害をテーマにした、当時としては画期的な作品でした。

 

 最近は、ミュージカル仕立ての優れた作品も珍しくありませんし、間弦楽器とのコラボレーションも盛んで、音楽的には多彩になる一方です。

それらのレベルの高さは目を瞠るばかりで、フラメンコ界が常に新しいものを取り入れつつ発展し続けていることを実感します。

 

 しかし今日、久し振りにCamelamos Naquerar を聞いて感じたのは、パルマとギター、唄と語り、靴音だけというシンプルな構成の中に凝縮されたフラメンコ独特の「反骨精神」とでも云うべきものでした。

 

 ショーアップされたホアキン・コルテスの作品とは、全く異質なもの。

どちらが良い、悪いではなく、次元の違うものなのでした。

 

 私はホアキン・コルテスの踊りも好きですし、フラメンコをあれほどメジャーにし、フラメンコファン以外のファン層を獲得した貢献度は大だと思っていますが、彼が踊らなくなった後、30年という時代を超えて、人の心を打つ作品として残るかどうかは疑問です。

 

 このCamelamos Naquerar という傑出した作品は、これから先もずっと色褪せることなく支持され続けるでしょう。

ただ、フラメンコのCDは、名盤にもかかわらず、いつの間にか廃盤になってしまうことが多いので、興味のある方は、ぜひ早めに入手されることをお勧めします。

 

 ジプシー用語であるcamelamos:カメラモスの不定詞はcamelar で、標準語のquerer :ケレールのこと。

 naquerar:ナケラールはhablar:アブラールですので、Camelamos naquerar はQueremos hablar ケレモス アブラール:我々は話したい という意味になります。

 

 余談ながら、現代のモダンフラメンコを代表する舞踊家、Belén  Maya :ベレン・マジャは、このマリオ・マジャの娘です。

 

 

 スペイン語の勉強をする上で、どうしても乗り越えなければいけない壁のひとつが「動詞の活用」です。

 

 辞書の後ろにも「活用表」が付いていますが、いつも辞書を持ち歩くのは重いものですし、電子辞書は画面の大きさ上、全てを一瞥できないという難点があります。

 

 そこで役に立つのが「動詞の活用だけを小さな本にした」これです。

http://www.amazon.co.jp/Conjugacion-Espanola-Conjugation-Spanish-Language/dp/970221355X/ref=sr_1_5?ie=UTF8&s=english-books&qid=1241028825&sr=1-5

 

 値段が手頃で、持ち歩きし易い大きさ、軽さなので私も一時期、ずっと愛用していました。

 

 膨大な量の動詞の活用で苦労するのは、日本人だけではありません。

 アルファベットを使い慣れている英語圏の人が、スペイン語を学習する時も、やはりひたすら“soy :ソイ eres:エレス es :エス somos :ソモス sois :ソイス son:ソン”と唱え続けるとのこと。←英語のb動詞(です)に相応するser :セールの直説法現在活用 

 

 この本は英語圏のスペイン語学習者向けに作られているので解説が英語ですが、参考書と違いそこは読まなくても、ひと目見れば判る編集になっています。

 

 最初の内はser:セール ひとつだけでも、全ての活用を覚えるのは大変だと思いますが、先ずは-ar動詞  -er動詞  -ir動詞の規則活用から覚えて行きましょう。

 

 コツを覚えると、ある時、一気に楽になりますので少しずつ挑戦してみて下さい。(ジワジワ覚えるタイプ)

それから、昼夜問わず集中して、何度も繰り返し声に出すような「動詞の活用強化期間」を、作るのも良いと思います。(一発奮起タイプ)

 

 いずれにしても「暗記」に苦手意識を持たず、楽しみながら続けることが大切です。

 

 世間はゴールデンウイーク。

お出かけの合間に「チラ見」で覚えてみるのは如何でしょうか。