「子供クラスは有りますか?」「何歳位から、始められますか?」と問い合わせを頂く事があります。

 

 私が、幼稚園児だった娘を連れてスペインに行った時に、子供を教えている先生に尋ねたところ「最低でも5歳」という返事でした。

 

 その後、私自身も何人か子供を教えましたが、日本の子供はスペインと違って日常的にフラメンコに触れる機会、というのが少ない環境で育っていますので、その差も考慮すると、やはり小学校高学年位からの方が良いように感じます。

 

 フラメンコは身体より先に「頭で理解して覚えることが多い」ので、ある程度、「考える力」が確立しないと1曲の振り付けを覚えることが出来ないのです。

 

 勿論、大変個人差のあることですから一概には言えません。

もし子供本人が「フラメンコ大好き」「やりたい」と強く望んでいるなら、それはもう年齢に関係なく、少しでも早く習わせてあげるべきでしょう。

逆に、親がどんなにフラメンコを好きでも、本人の興味が今ひとつであれば、押し付けるべきではありません。

 

 『好きこそ物の上手なれ』と言いますが、フラメンコに一番大切なのは、まさにその「好きであるかどうか」です。

自宅でフラメンコの音楽を流して聞かせ、耳を傾けてくれるようなら、好きになってくれる可能性は「大」ですね。

ぜひ、間近に踊りを見る機会を作ってあげて欲しいと思います。

 

 

 

 もう、何年も前のことです。

当教室への問い合わせメールをある方から頂きました。

 

 経験者の方で教室の移籍を考えておられるようでしたが、その内容は「問い合わせ」というより「現教室への不満」が連ねられたもので、私は読みながら大変、複雑な気持ちになりました。

 

 移籍を考える場面は人それぞれだと思います。

転勤、引越しなどの環境変化でそれまで通っていた教室とスケジュールが合わなくなった、カルチャースクールの講座なので、もっと専門的にやりたい、等々・・・。

 

 でも、もし教室内での生徒同士や先生との人間関係に何がしかのトラブルを抱えての理由であれば、それは、「何処へ行っても同じこと」かも知れません。

 

 人間同士ですから「相性」というものは確かに有りますし、教室の雰囲気も、先生の個性が反映して幾らかは違うものでしょう。

でも、フラメンコというテーマに集ってくる人たちは、ところ違えど何がしかの共通点を持っていると思って良いと思います。

 

 人間関係のトラブルは、その殆どが「自分自身の内面」に原因があるものです。

「誰かを嫌いになってしまう人」は、場所を変えても又「誰か嫌いな人を見つけてしまう人」なのです。

そこに気付けない点こそが「原因」と言っていいかも知れません。

 

 広いようで狭いのが日本のフラメンコ界。良いことも悪いことも耳に入ってきます。

先生業同士というのは、傍目から交流がないようでも実は友達・・・とか、一緒に仕事したことはないまでも伴奏者を通じて話しを聞いているとか・・・お互いに情報を持っているものです。

 

 もし、稽古場を変えて心機一転、フラメンコと真摯に向き合おうと思っておられるならば、前の稽古場の悪口は一切、言わないのが賢明です。

 

 

Q:「フラメンコを習ってみたいと思っていますが、外反母趾で膝も余り丈夫ではありません。足に問題を抱えていると、やはり無理?諦めるべきでしょうか?」

 

A: 外反母趾は辛いですね。実は私も軽い外反母趾なのです。

 自覚症状が無い位、軽い状態だったので、整形外科でそう言われた時は、「え・・?」という感じでした。

膝と踵の痛みも慢性的に抱えています。娘時代にオートバイの事故で左膝を17針、縫っているので、その後遺症もあるようです。

 

 でも、踊っています。その分、しっかりと自己管理しながら・・。

プロのダンサーで、足に故障を抱えていない人は、まず居ないでしょう。半月板の手術をした人も何人か知っています。

 

 外反母趾や膝の故障は、症状の軽重・痛みにかなり個人差があるものですし、その辛さは本人以外判りません。

ですから実際に故障を抱えている人に「大丈夫!」と軽々しく言う事は、絶対、出来ませんし、かと言って「無理です、諦めて下さい」とも言えないのです。

私自身が諦めら切れないでいるのですから・・。

 

 私の場合、具体的にどうしているかと言いますと・・・教える時も、自分の練習をする時も、可能な限り、フラメンコシューズを履かずに、バレエシューズで過ごすようにしています。

なるべく素足に近い状態で過ごし、指や踵に負担が掛からないようにしながら、どうしてもフラメンコシューズを履く必要がある時は、靴に衝撃吸収パットを足したり、足にサポーターを付けるなどの工夫をしています。

又、30分以上同じ靴を履き続けないように、途中で脱いだり、履き替えたりもしています。

 

 フラメンコシューズは低めの踵でも4cm以上はありますので、どうしても爪先部分に体重が掛かってしまいます。

また、固い靴音が響くよう、靴底には釘が何本も打ち込まれており、重くて頑丈に出来ています。

その重量感や耐久性は、一般の靴の比ではありません。

そうして足の激しい動きに張り付いてくるよう、なるべく「キツイ」状態で履くものですから、足に掛かるストレスは相当なものなのです。

 

 本当に、長く続けるほど、充分に自己管理しないと踊っていられるものではありません。

自己管理は、ただ労わるだけでなく、鍛え続けることでもあります。

外反母趾も膝の痛みも、容易く消失する症状ではありませんが、それらの痛みを軽減する為に、他の部分を常に鍛錬していくのです。

 

 素人考えでやってはいけません。

ちゃんと舞踊に関する知識のある医師や専門家のアドバイスを受け、専門書なども読んで勉強すべきです。

 

 ここまで、読んで頂いて「ふぅ・・・」と溜息をつかれたなら・・、そしてそれが「そんな大変そうなこと、とても・・・」と少しでも思われたなら「やめておかれる方が宜しい」と申し上げましょう。

 

 その溜息は、フラメンコを習得していく途上で壁にぶつかった時に、「私は足が・・・」という、逃げ口上や愚痴に、きっとすり替わってしまうからです。

 

 「私(川崎さとみ)のようなやり方もある」「諦めなくても良さそうだわ」との安堵から洩らされた溜息なら、先ずは、医師のアドバイスを受けましょう。

きっと、症状の軽重によって「このレベルまでなら・・」というアドバイスや、負担を軽減する運動などを教えて下さると思います。

 

 そして、どこかの教室の門を叩かれる時には、そこの先生に「しかじかの故障を持っていますが、出来る範囲のことで頑張りたいので・・・」と相談なさってみて下さい。

 

 先のブログでも書きましたが、フラメンコは身体条件によって、人を拒否することはない芸能です。

「思い入れ(愛情に裏づけされた努力)」を持って接すれば、必ず、ある部分にまでは辿り着くことができるでしょう。

 

 個々の身体条件によって「出来る事・出来ない事」は誰にでもありますので、良い意味で開き直り、フラメンコと向き合う姿勢を模索して頂ければ、と思います。

 

 

 「初めまして、先日、友人のフラメンコ発表会を見に行って、どうしても習いたくなってしまいましたが、まだ子供が小さいので目が離せず、すぐには始められません。せめて、幼稚園に通うようになれば・・と思っていますが、待ちきれない思いです。今、38歳なので40代になってからでも大丈夫かしら?と年齢的なものも気に掛かります。未経験者でも自宅で出来るレッスン方法などあれば、教えて頂きたく、メールを差し上げました。・・・」

 

 教室のHPに“子育て支援制度”の項目などがあるからでしょうか、若いお母様から、このようなメールをよく頂きます。

 

 全ての方に、長文のお返事を差し上げることも出来ないので、いつもは、ざっくりとした所感を述べさせて頂いているのですが、今日は、特定の個人に向けてではないので、少し、丁寧に書いてみようと思います。

 

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 フラメンコに興味を持って頂き有難うございます。

 私も子育て経験者ですので、自分の娘が小さかった頃の事を思い出します。

自宅からせいぜい近所のスーパーまでの往復が行動半径だった時期もありました。

でも、子供と言うのは有り難いもので、健康にさえ育ってくれれば、いつかは親離れしてくれます。

「抱っこ」をせがんでくれるのは、過ぎてしまえばほんのひと時。後から、あの時もっと一緒にいたら・・・と思い返しても、取り戻す事の出来ない時間ですから、どうぞ、今は、存分に「手のかかる時期」を堪能して下さい。

 

 三つ子の魂、百まで・・という諺どおり、幼児期の数年間は、子供の人格形成にとって、掛け替えの無い時で、大人になってからの数年間とは比較の仕様もありません。

 

 確かに、30代後半から40代前半に掛けては、自分の体力が急速に衰えるようで不安を感じた時期でもありました。

でも、今、50代を目前にして思い出せば、まだまだ、若かった!と感じます。

 

 大丈夫です。今まで、小学生から80歳の方まで、指導してきましたが、2~3年の年齢差、というのは全く問題にはなりません。

実年齢と肉体年齢には、個人差があるものですが、「どの年齢から始めるか?」ということより、「その年齢までどのように過ごしてきたか?」ということの差が大きいのではないでしょうか?

 

 日頃から「よく歩き」「よく考え」ている人は、若々しく向上心も旺盛で、50代、60代からフラメンコを始められても、充分、楽しんでおられます。

 

 「未経験者が自宅で出来るレッスン法」というのは、具体的には市販されている教則DVDなどを使う方法も有りますが、もし、その教則DVDの作者自身に習う機会に恵まれないのならば、余り、期待しすぎない方が良いかも知れません。

フラメンコは、クラシックバレエなどと違って、「万国共通の型や基礎」が、あまり確立していないのです。

勿論、共有出来る専門用語は有りますが、「踊り方」となると、その先生それぞれのスタイル、振り付けになってしまいます。

どれが正しい・間違い、というのはなくて、フラメンコでは「自分のスタイル」を確立することが大切なので、100人、100様の踊り方が存在する訳です。

 

 ですから、DVDを繰り返し見て、踊りを1曲コピー出来たとしても、それはそれ、実際にどこかの稽古場に通った場合、又、そこの踊り方は別に覚えなくてはなりません。

勿論、参考になることは沢山有りますが、あくまで「参考」とされる方が良いでしょう。

 

 それよりも、もっと根本的、かつ、何処で習うにしても役に立つ能力とは、「フラメンコに必要な身体と耳を作ること」のひと言に尽きます。これはフラメンコを習える環境になくても、出来ることなのです。

 

 「身体を作ること」は、既にHPやプライベート・ブログでも書いてきましたが、「踊りに必要な筋力を養うこと」です。

フラメンコは本気で踊ると相当ハードな動きを要求されます。

もう殆ど“スポーツ”と言っても良いくらいでしょう。

実際、私が自分で練習して「効果あり」と実感したエクセサイズや栄養の摂り方の情報源は、スポーツマン向けの指導書が殆どです。

 

 日常生活の色々なシーンに、上手く「筋トレ」を取り入れてゆきましょう。

なるべく家電や乗り物に頼らないで、常に身体を使い、運動量を増やしましょう。

子供を抱きかかえるのも「エクセサイスのひとつ」と捉えれば、少し、重さが気にならなくなるかも知れません。

 

 勿論、使うばかりではなく、ストレッチや入浴で筋肉の緊張をほぐしたり、食事に気を配ることも大切です。

蛋白質、カルシウム、ビタミン類など、全ての栄養素をバランスよく「適切なタイミング」で摂りましょう。

 

 では「耳を作る」とは?

フラメンコはスペインのアンダルシア地方で発祥した、民俗芸能です。

最近、日本でも広く知られるようになったとはいえ、まだまだ、街角で耳にする類の音楽では有く、「似て非なるもの」が、フラメンコと混同されていることもある位です。

例えば、ジプシーキングは日本でも数々のヒット曲を出した人気グループで、彼らの音楽は私も好きですが、ジャンルとして「フラメンコ」では有りません。

 

 ですから「聞き分ける耳」を持つには、やはり本物のフラメンコを沢山、聞いておく必要があります。

どこのCD店にでも置いてあって、かつ「本物」なら、パコ・デ・ルシアというギタリストやカマロンという歌手のCDが一番手に入り易いと思います。

 

 最初は一枚のCDで、どの曲を聴いても「似た感じ」に聞こえるかも知れませんが、それはまだ「耳が出来ていない」のですね。フラメンコは曲の形式に種類があるので、その内、これは「アレグリアス」「タンゴス」「ブレリアス」・・と聞き分けられるようになってきます。そうなるまで聞きましょう。

 

 もうひとつ「耳」を養うことに通じますが「リズム感を鍛えておくこと」も大切です。

フラメンコは、とても速く演奏される部分が多々あり、リズムも複雑なので、先ずはそのスピードに慣れることです。

 

 手拍子でリズムをとることを「パルマ / パルマを打つ」と言いますが、3角錐型で、針が左右にカチカチと揺れるタイプのメトロノームは速度が足りず、音量も調整できないので、電子式のメトロノームがお勧めです。

ピンジャックを使ってオーディオの外部入力に接続すると、音量が自在ですし、大型家電量販店などで2~3000円で買え手頃です。

 

 ちなみにプロが踊る時の伴奏者のテンポは、「上げ」のシーン等では300を楽に越えてしまうことも有り、それは体験してみないことには想像できない速さだと思います。

 

 取り合えず、そうゆうものだということを「知っておいて」先ずは、100迄のテンポが正確に取れるような訓練をしてみましょう。

 

 いえ、、ただもうメトロノームに合わせて、手拍子を打つだけのことですが、この「打つだけ」のことを「ずっと、よどみなく、正確に」というのは意外と難しいものです。

きっと、一分もしない内に、手が疲れてくるでしょう。(ここで、また筋トレに話しが戻ってしまいますね)

 

 100迄のテンポをメトロノーム通りに正確に打てるようになったとしましょう。今度はそのリズムで歩いて(足踏みして)みましょう。5分間、外さずに続けるのは、けっこう難しいはずです。

それも、出来たとして・・・ではコントラ(裏打ち)はどうでしょうか?

これは歩みはメトロノーム通りに、手拍子は、その拍と拍の間、つまり、ちょうど「足が上がっている時に手を打っている」ことになります。

これまた、出来たとします。では、手と足を逆にしましょう。

手をメトロノーム通りに、足を拍の間に入れます。

更にバリエーションで、手を2度打つ間に足は1回、手を3度・・・とリズムパターンを変えてみたり・・・。

 

 このように、延々とメトロノームで遊ぶ、というかなり「オタク的」なリズム感の鍛え方を「楽しめる」人ならば、相当フラメンコに向いていると言えます。

 

 フラメンコではリズムのことを「コンパス」と呼び「コンパス感」というのを何より大切にします。基本的なコンパスの掴み方、フラメンコ独特のアクセントの付け方は幾つかパターンがあるのですが、それを書くと、非常に長くなりますので、また、次の機会にしたいと思います。

 

 ここまで書いただけでも、稽古場に通う以前にやっておけることが、どれほど沢山あるかお判り頂けたと思います。

 

 そして、当然ながらフラメンコはスペインの芸能ですので、興味を持たれたからには、ぜひ「スペイン語の勉強」も始めて頂きたいのです。

 

 これは私自身の反省をも踏まえて、特に強調したいことです。

スペイン語を学ばずしてフラメンコを理解しようとするのは、諸外国の人が日本の能や歌舞伎のファンになるのと同じことです。外から眺めているだけなら問題有りませんが・・・・。ずっとお客様のままで居なければなりません。

語学は、よほどの才能と環境に恵まれた人でなければ、1年やそこらではどうにもなりませんから、とにかく早い時期から少しずつ勉強されることをお勧めします。

 

かくゆう私も、只今、勉強中の身です。道のりは未だ遠いです。

長くなりましたので、今日はこの辺で・・。